レーモンドの住宅建築
レーモンドによる建築住宅は戦前60、戦中15、戦後約68、全体で140と数えられています。戦前と戦後の建築の殆どは日本におけるものです。
レーモンドは、日本に到着した最初の日から日本に惹かれ、日本の建築の最初の研究を始めました。特に開放的で、かつ合理的な柔構造を日本の和風建築に見いだして、和洋をうまく住宅建築の中に取り込んでいきました。
戦前、多くの建築家が洋風ともいえる堅い箱形住宅と作ろうとしていたのに比べ、レーモンドは鉄骨製箱型から、打ち放しのRC造りの自由な平面計画に、さらに木造の二階建ての連窓のコンパクトな住宅へと変わっていきました。つまり、日本の風土にあった、開放的でよく風の通る住宅に的を絞り、木造と開放性の良さという日本的性格の取り入れに向かったといえます。
こうした木造和風プラス洋風のレーモンド・スタイルが定着したのは、第二次世界大戦後で、1949年から1950年にかけて建てられたスタンダード石油社宅は、こうした戦前の住宅の傾向をさらにコンパクトに単純な形に纏めたレーモンドスタイルの戦後の出発点となる建物です。
レーモンドは建築の基本として、自然性、単純性、直裁性、正直性、経済性におきました。レーモンド・スタイルはアメリカ的なオープンな平面プランに日本の伝統や習慣を合体させたもので、外部的には、木造で金属屋根の立ちはぜ葺き、外壁は立て板張り、連続する木製サッシュ、内部的には構造材の丸太があらわしで、壁は合板仕上げ、サッシュは柱から外され引き込んで開放(「芯外し」といわれる工法)が特徴的です。
レーモンドスタイルは、こうした形体的で、物理的な構法や材料としてみられますが、なによりも日本の伝統をそのまま示す以上に、その内に秘めている日本建築の原理を前面に出していたことが明確される必要があると考えます。
レーモンドの住宅設計作法
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自然
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古来から日本人が自然との共存を無意識的に考えてきたことを建築にいかし、それを 形としていくのが現代の住まいの設計の基本条件と考えている。 |
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空間
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自然との一体感による構造と空間の直裁な表現、ありのままの融通性のある住まいの空間、これはまたモダニズムの追求していたものと一致していることを発見。
注:モダニズムとは20世紀以降に起こった芸術運動。建築においては、過去の様式、装飾を否定し、合理的、機能的な建築手法をいう。 |
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壁
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日本的な柱粱による柔構造、できるだけ可動のふすまや障子の間仕切りを使って固定の壁を少なくする。壁も合板を主とし、自然材に木の色を残す。 |
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障子
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和風と洋風の接点として活用 |
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ふすま
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壁を少なくして単純な平面をつくろうとしたレーモンドにとって都合のいいものだったらしく、至る所に利用。 |
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屏風
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間仕切り用の折りたたみ戸として、和紙の上に色紙の横線をあしらった屏風を使用。 |
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引き違い
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西欧にその伝統はなく、レーモンドは戦前コンクリート住宅のスチールサッシュ を引き違い戸によってなんとか完成(これが現在のアルミサッシュの引き違い戸に活かされている)
木製の場合には、ガラス戸や障子、ふすまを柱芯から外して柱の前あるいは後に配置し、自由に引込みが出来るようにして大空間を作る「芯外し」(三沢氏の造語)の手法を作り上げた。 |
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間仕切
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動く間仕切としてのふすまや、可動間仕切の屏風を洋風の空間に持ち込み自由な空間変化に用いた。 |
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暖炉
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居間を活き活きとさせるために、障子のある和風の立式の佇まいの中に暖炉をおくことで和洋の住まい方を合体させようとした。 |
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厨房
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主婦の働く場所には太陽があるべきだと、出来るだけ南側に位置するようにした。 |
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浴室
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日本人が不浄と考えてきた便所をアメリカ風に同居させて明るい清潔な部屋とした。 |
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内庭
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日本に昔からあった坪庭の手法を使い、部屋等の機能を分け、動線を分離しようとするときに使用。 |
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テクスチュア
(肌理)
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肌ざわりにこだわり、室内の柱や壁、扉の把手、丸太柱、木の棚の削られた肌等に細やかな感性を表現。木が持つ自然観を、室内全体に感じ取るように設計
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スタンダード石油本牧社宅の建築上また景観上の特色
「本牧鼻」の上に建てられたスタンダード石油社宅は当初平屋が3戸、二階建てが1戸でしたが、平屋建て2戸は解体され、現在平屋が1戸、二階建てが1戸が10年来無人のまま放置されて現存しています。
※本牧鼻については旧スタンダード石油欄の周辺の史跡ページを参照
現在は生い茂った緑に囲まれて見通しはよくありませんが、家の外から見るとコンクリートうち放しの丸柱(壁から外したピロティのように見える丸柱)がみえ、深い庇が回っています。また、三沢氏によると家の内部は、すべて木製、内側には柱を見せず、いっさい「芯外し」とすることで部屋を広く見せ、天井までの木製サッシュの大きな引き違い戸。家具は造り付けが多いといういことで、レーモンドスタイルの戦後の出発点となる記念碑的な建物として保存が望まれます。
また、立地的にも自然との調和を大事にしたレーモンドらしく、地形を巧みに利用しいずれも展望を確保するよう配置されています。平地に建てられている平屋は崖際に近くにあり、遠くは房総半島を望めるように建てられています。
小高い丘の上方の二階建ては、下から突き上げるように登り切った所にあり、2階部分がT字型に窪地に向かって突き出すように建てられ、おそらく平屋越しに海が眺められたと思われるし、またこの建物を見る者には眺め上げるという感じで小住宅と思えない存在感が感じられます。この建物はこの土地の形状と一体となっており平地に移したら何の変哲もない二階建てになってしまうように思われます。